1バッチ目問題を解決するエコな方法

前回の投稿では、1バッチ目問題の原因が、ドラム内の温度分布の不均一(ドラムとブレード、ピラー)が原因ではないかと記載しました。

1バッチ目問題の解決法は非常に簡単で、とりあえず<一度焙煎してしまえば良い>のです。つまりなんでもいいから、コーヒーの生豆を投入することで、ドラム内の温度分布が平準化されるのです。

人によっては、1バッチ目の焙煎豆を破棄するという話を聞いたことがあります。さすがにそれは勿体無いでしょ〜。なんとかエコな方法を考えましょう。

ハンドピックで出た欠点豆をためておいて、1バッチ目に使っちゃいましょう。どうせ捨てるのなら、その前に役に立ってもらいましょう。この方法の欠点としては、欠点豆はそんなにたくさん出ないということですね。だから、いつもこの方法ってわけにはいきません。

<その2>焙煎豆に水分を足して再利用する

テストバッチなどで、お客様に出せない焙煎豆が出たとき、どうしてますか?勿体無いのでそれを利用しましょう。

焙煎豆に重量の20%程度の水を加えて、攪拌します。すぐには水分を吸収しないので、しばらくしたらもう一度攪拌します。これを数回繰り返して、あとは1〜2日放置します。そうすると焙煎豆はすっかり水分を吸収してくれます。この豆を1バッチ目に投入して、適当に焙煎します。同じコーヒー豆ですから、変な成分や匂いがついたりする心配もありません。ドラム内の温度分布が平準化したら、本番の焙煎を行えば良いのです。

焙煎豆に水を加えます
水を吸った焙煎豆

焙煎豆に重量の20%程度の水を加えます

水を吸った焙煎豆。しっとりしてます。

なお、使用した焙煎豆は、再度水分を足すことで、何度も繰り返して使用できます。原理的に無限に使うことができますが、気分的にほどほどで廃棄しましょうね。失敗した焙煎豆って結構たくさんありますし・・・(僕だけ?皆さん無いですか??)

<その3>1バッチ目は浅煎りをしない

現実的には、この方法をとっている人が多いのではないでしょうか?僕のように浅煎りしかしない人にとっては、できない方法ですけど。


要は、廃棄物の再利用でなんとかしようというのが私のアイディアです。でも最終的には廃棄物が発生するので、完全にエコってわけではないですね。

コーヒー残渣の利用方法は、堆肥化などさまざまな取り組みがありますが、いまのところ決め手はない状態で、ほとんどが焼却処分されています。これについても考えなくてはなりません。

焙煎機をサーモグラフィカメラで撮影すると・・・

今回のお話は、焙煎研究グループ「ROASTARS」の小山くんのnoteから

焙煎の1回目(1バッチ目)はなぜかうまくいかない・・・だからあの手この手でなんとかする必要があるのが焙煎家の大きな悩みでした。これが、通称「1バッチ目問題」です。

その原因のヒントを見つけたのは、Laboで導入した放射温度計の測定値でした。

放射温度計は、対象物の表面温度を瞬時に測定できるという特徴があります。焙煎機に通常ついている熱電対温度計の弱点を克服する可能性のある注目の温度計です。Kuriya Coffee Laboでは、サイトグラス(焙煎豆の状態を観察するためのガラス窓)を通してコーヒー豆の表面温度を測定する試みを続けています。

その放射温度計を取り付けて焙煎機のプレヒート(暖機作業)をしていたときのデータがコレ(緑色が放射温度計、青色が熱電対温度計による温度です)

そして、1バッチ後に同じように測定したデータがこれ

注目すべきは、プレヒート時の放射温度計のグラフの変化。鋸状に凸凹しているのがわかります。それが1バッチ後は滑らかに変化しているのです。

放射温度計は、サイトグラスに対して垂直方向に測定しているため、コーヒー豆が入っていない状態では、ドラムの空間を測定していることになります。ドラム内に何もない場合を想定すれば、ドラムの奥の壁面を測定しているわけです。

しかし、ドラム内はただの空洞ではなく、「ブレード」と呼ばれるコーヒー豆を攪拌するための歯のようなものや、ドラムを回転軸と固定するピラー(柱のようなもの)が複雑に配置されています。

つまり、放射温度計で回転するドラムの内部を測定すると、一定の間隔で、ブレードやピラーに測定ビームが遮られることになります。つまりブレードやピラーの温度も測定しているわけです。

そこで、プレヒート段階で、放射温度計のグラフに凸凹があるのは、「ブレードやピラーとドラム壁面の温度に差があるからではないか?」と考えました。

1バッチ後にその凸凹がなくなり平坦なグラフになるのは、「コーヒー豆を投入することで、熱が分散され、ブレードやピラーとドラム壁面の温度の差がなくなるからではないか?」

ひいては、「1バッチ目問題の原因は、ドラム内の温度分布に差があるからではないか?」と考えました。

もし仮説が正しい場合、「どの部分の温度が高くて、どこが低いのか?そしてその原因は?」も非常に興味のあるところでした。

しかし、この仮説を証明するためには、ドラム内の温度分布を同時に測定する「サーモグラフィカメラ」が必要です。しかも数百度の温度帯で測定可能なものとなれば、そう簡単に手に入るわけもありません。

そこで、東北大学理学部ドクターコースの小山氏、東北大学農学部の山尾氏&村上氏、そしてKuriya Coffee Roastersの栗谷で、結成した焙煎研究グループ「ROASTARS」のメンバーに相談したところ、小山氏から「研究室にあるよ。測ってみましょう!」との回答!!

その結果は・・・(詳しくは小山氏のnoteを読んでください)

なんと、Diedrich Roasterでは、プレヒート状態では、ブレードの温度が最大500℃に達し、ドラムの壁面の温度より200℃も高い場合があることが判明!

そして1バッチ後に測定するとそれらの温度差が大幅に低減されることがわかりました。

したがって、サーモグラフィカメラの測定結果は、放射温度計による測定データから考えた仮説を支持する結果となりました。

また、aillio Bullet Roasterでも同じように測定したところ、異なる結果になりました。これは、焙煎機によって事情が異なる(構造が異なる?素材が異なる?)可能性があることを示唆しています。

小山くんのnoteでも書かれていますが、今後の方針としては、他機種ではどのような状況なのか、まずは測定することが重要だと思います。

もし、この問題に興味がある焙煎家がいたら、ぜひご連絡を!

次は、「1バッチ目問題を解決するエコな方法」について記載したいと思います。

Kuriya CoffeeがRising Coffee Fes.を企画した理由

Rising Coffee Fes.が2月24日に開催されます。

新しいコーヒー店、これからのコーヒー店、これからのコーヒーマン。そういった人たちがスポットライトを浴びて、自らの技能を駆使して、お客様にコーヒーをサーブするイベント。きっと新しい出会いと発見があるはずです。


Kuriya Coffeeがこのイベントを思いついたのは、昨年秋のSendai Coffee Fes.の帰り道のことでした。

天候には恵まれませんでしたが、たくさんのお客様に来ていただき、たくさんのコーヒーを提供することができました。もちろん売り上げもありがたかったです。それもこれもボランティアで頑張ってくれるキャストの方々のおかげです。

キャストの方々と顔見知りになり、彼らがどれだけコーヒーが好きで、日々さまざまなことにチャレンジしていることもわかるようになりました。でも彼らが定禅寺通でコーヒーを提供することはありません。あくまで裏方として頑張っているのです。

そんな方々に手伝いをさせ、自分たちだけが良い待遇で出店させていただいていることに、感謝と同時に申し訳なさが湧いてきました。

「彼らにスポットライトを当てるイベントができないだろうか?」

帰り道の車中で、そんな会話になりました。

Kuriya Coffeeはサポートにまわって、出店も、企画の主役も、若手のコーヒーマンに任せてみよう。あくまで主役は彼らで。そんなアイディアがどんどん浮かんできました。

さっそく、登米市のKultur Coffee Roastersの佐々木くん、東北大コーヒーサークルcooffambersの村上くんに声がけして、快諾を得て、この企画が本格的に動き出したのです。

イベントまであと2週間となり、いまが一番きつい時期です。宣伝もしなくてはいけない、チケットも売らなくてはいけない、スケジュールの調整や、諸々の準備・連絡・検討事項が次から次に襲ってきます。チケットの売り上げが少ないとイベント自体が赤字になるというプレッシャー。さらに出店者として美味しいコーヒーをどうやって提供するか。

このような全ての経験が、彼らの糧となり、近い将来に大きな実がなることでしょう。


これを読んだ皆さん、どうか彼らを応援してあげてください。お時間があるなら、ぜひ会場に足を運んでください。できることなら事前にチケットの購入をお願いします。

彼らの活躍があれば、宮城・仙台が世界有数のコーヒーの街として注目される日も遠くないと思います。

Rising Coffee Fes. への想い

コーヒーの新しいムーブメントとして「サードウェーブコーヒー」の呼び名が登場したのが2000年初頭。その象徴としてアメリカ西海岸の「ブルーボトルコーヒー」が東京に進出したのが2015年。ほぼ時を同じくして2014年には仙台市内にもスペシャルティコーヒー専門店が開業しています。

その後、日本の(宮城県の)コーヒー業界は、より多くの人に新しいコーヒーの魅力を伝えるべく様々なイベントを興し、その普及に努めてきました。

それから約10年が経過し、当初は聞き慣れなかった「スペシャルティコーヒー」という言葉も定着しつつあり、提供するコーヒー店も随分と多くなりました。

2022年の総務省の家計調査では、仙台市のコーヒーの1世帯あたりの年間支出額が全国3位に入り、「コーヒーの街」として急成長しています。

そして、若年層(学生を含む)からも、新しい世代のコーヒー人が続々と登場し、コーヒー店としての起業やコーヒー抽出技術の研鑽、海外への渡航、コンペティションへの出場など、様々なチャレンジをしています。

しかし、次世代を担う新しいコーヒー人たちにスポットが当たることは稀で、彼らの才能や努力の成果が埋もれたままになっているのが現状です。

そのため、新しい世代のコーヒー人にスポットを当て、活躍の場を提供し、多くのお客様と触れ合うことで、さらなる飛躍に繋げるイベントを実施することにしました。

イベントを実施する大河原町は、宮城県仙南地方の中核都市であり交通の便もよく、会場となるえずこホールは設備の整った素晴らしい劇場で、イベント会場としては申し分のない環境です。

そこで、大河原町民、ひいては仙南地域の人々に、スペシャルティコーヒーの魅力を伝えるとともに、仙南地方以外から来場するコーヒーラヴァーの方々にも大河原町・仙南地方の魅力を知っていただき、相互交流を深めるイベントになることを目標とします。


Rising coffee fes 実行委員会

KURIYA COFFEE ROASTERS 栗谷将晴 / Kultur coffee roasters 佐々木史寛 / 東北大学コーヒーサークル cooffambers 村上真太郎

能登半島地震チャリティについて

当店で行っているチャリティは以下の2種類です。

1.指定のコーヒー豆(コロンビア・トリマグランデ)をお買い上げ頂いたら、その売上を全額寄付します

https://www.kuriya-lab.com/coffee-beans-store/

2.レジ付近に設置している募金箱に¥200以上ご寄付頂いたらお客様にお好きなドリップバッグを1個プレゼントします

なお、当店のチャリティは1月末まで実施する予定です。

また、集めたご寄付の支援先を次の通りと致します。

「令和6年1月能登半島地震コーディネーター支援募金(エティック)」

https://donation.yahoo.co.jp/detail/5545002

災害発生時には行政、社会福祉協議会、災害支援NPOなどが多様な支援を行う仕組みが整っています。そうした支援を被災したひとりひとりにまで届けていく存在として重要性を指摘されているのが、地域に根ざした中間支援組織です。

今回の寄付金は、中間支援団体への支援金や、中間支援団体への人材支援に充てられます。


[中間報告 2014/01/12]

1月12日現在で¥28,560のご支援金が集まりました。ご協力頂いた皆様ありがとうございます。